タッチレス(手を触れない)ACAAN
Any Card at Any Number
「Any Card at Any Number:エニーカード・アット・エニーナンバー」といえばサイレントランニング式ACAAN。
というのが私の中での結論です。
カードケースからデックを出さず、かつ、観客が決めたカードとナンバーについて一切こちらが情報を知らない状態で現象を起こす。完璧。理想的。
『F.A.S.T:タッチレスACAAN』
幸運にも、このたび『F.A.S.T:タッチレスACAAN』を演じる機会を得ました。
SR式(サイレントランニング式)と異なる点は応用が効くことです。
ACAANの他に「観客の選択(手によるカットと心による自由な意志)で決めたカードの位置を、演者は予知出来ていた」という奇跡が起こせます。
これは『Think by Shin Lim』とは反対の現象です。
Thinkは枚数を観客が決め、その位置にあるカードを演者が予知しているという現象を、演者がデックに対しタッチレスで行います。
FASTは演技の直前で「これはACAANじゃないほうが良い」と思えば、現象を変えられるという特長があります。
相手を見て直感でわかることがありますよね。
出来る限りフェアに。オンラインマジック
世の状況が未だこの状況ですので、初回はオンラインによる実演でした。
WEBカメラを使って遠方にいる相手に。タイピングではなくマイクを使います。
画面内にデックが常に映っていることを保ち、ワンデックしか使わず、スート&バリュー(数値)を相手の意志で自由に決めさせます。
演者はどのカードが選ばれたのか1枚に絞ることは出来ません。
この「絞れない」ということが重要で、そこから導き出されたナンバー(枚数目)も自ずと知り得ないわけです。
「演者が知らない。知らないものをどう操作・指示、計算させようが、その結果も演者は知り得ない」という方程式が不思議の度合いを高めます。
メモをさせる効果
SR ACAANでも私はこうするのですが、スートや数値、枚数目をメモさせるようにしています。
途中で変更されると現象に結びつかないこともメモの理由ですが、そのほかに2つの訳があります。
1つは観客の作業をラクにさせるということです。
ACAANはカード当て等とは異なり、少し珍しい現象ですので「複雑。何を演っているのかよくわからない」と奇異に感じる方がおられます。
メモをさせることで「なるほど。これは不可能だ」と理解してくれるものです。
もう1つは、観客自筆のメモがあることで「このメモを盗み見ない限り、演者には何の情報もない。」と錯覚させる効果です。
実際にはこちらが知っていることがあります。SRACAANもFASTも。
それでもタイムミスディレクション(時間経過による心理誤誘導)のせいもあるのでしょうが、「絶対わからないはずだ」と勘違いしてくれます。
奇術でメモをさせるとどうしても内容を隠そうとする意識が強くなりますね。
これもACAANを演じやすくするミスディレクションになっています。
オンラインでのFAST実演は充分、効果がありました。「鳥肌が立つような驚きを感じる」とのことです。
2度目は別の方に、眼の前で演じました。これも異様なほどの驚きをもたらしました。
相手は背後を気にする
2回の実演で共通していたのは、ACAAN成立後、相手は背後を気にするということです。「鏡があるんじゃないか」というような。
この動作こそ「このメモを盗み見ない限りは不可能だ」とFASTに感じている証拠です。
このような裏付けを感じる奇術″ は良いものです。
SR式ACAANでも必ずと言ってよいほど後ろを振り返る観客を見ては、「してやったり」と手応えを感じたものです。
背後を気にしたということは、私が直接訊いたり、直接指示したことを忘れているとも言えます。
相手は「何も知らないはずなのに・・・」と思っているわけですから。
錯覚をどうやって自然に起こすか
奇術で不可能な現象を確実に起こすには、こういった勘違いや錯覚をどうやって自然に起こすか、ここが重要視されます。
FASTはセルフワーキングですが、おそらくここが最もテクニックを要する箇所でしょう。
原理は単純で古典的でも、奥深さを感じるFAST。
なお、FASTタッチレスACAAN実演にあたり、「ある情報を得るためにパーフェクトクリアクリップボードを使おうか?」と当初は思いましたが、どうやら不要なようです。
とある情報を直接訊いても相手は錯覚を起こしていますから、何の問題もありません。
ー北海道 橋本英司氏寄稿
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