改案という名の改悪

小坂井敏晶氏(フランス在住アマチュアマジシャン)の宮中桂煥編『沢浩の奇術』(東京堂出版、二〇一三年、第二部)より

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● バリエーションが必ず良いとは限りません。改良のための改良に終わっては意味がありません。

優秀な古典はすでに完成されており、それ以上発展させようとすると、どこかに歪みが出やすい。
自然さを犠牲にしてまで不思議さを強化するのでは本末転倒です。

● 「ブレインウェーブ・デック」の改案を例に取りましょう。

すべてブランク・カードで、観客が指定したカードだけが印刷されているというバージョンが商品化されています。
これは原案に比べて改良と呼べるでしょうか。
ドクター沢の見解は否定的です。

ブランク・カードを使うのはビックリ箱の発想であり、その時は確かに驚きます。
しかしブランク・カードばかりのデックは、それ自体が不自然です。
だから、素材そのものにトリック性が残り、観客はデックを改めたくなります。
手品師でなくともできる予感現象である点が、名作「ブレインウェーブ・デック」の長所です。

予知されたカードが1枚だけ普通のデックに入っているという設定の大切さを忘れてはいけません。

マックス・メイビンの傑作「B’ウェーブ」は「ブレインウェーブ・デック」とよく比較されます。
「B’ウェーブ」ではブランク・カードを使用しますが、この場合は演出の論理に完全に組み込まれており、ブランク・カードを使う必然性があります。
ですから演出の狙いを念頭において、全体の論理を吟味しながらバリエーションを考えるべきです。

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