良いマジック・好まれるマジック

・好まれる奇術

人は十人十色と言えども、大なり小なり『長くて難解な話』を嫌がります。
手品に置き換えると『手順が長くて現象がわかりにくいもの』ほど煙たがられる傾向にあります。プロマジシャンであれば別ですが、よほど演者に人としての魅力がなければ後者は観客が興味を持ちません。
手順は短め、現象はシンプルなものほど名作と言われているはずです。

心の中で複雑な作業をさせて『思っただけのカード』を決めさせ、長々とスペルトリックなどの手続きを経て、例え不思議かつ見事に当てたとしても、
「不思議だけど感動しない」と思われてしまいます。

特にメンタルマジックでは『証拠となるメモを取らせずに心の中だけで行う作業』というプロセスがあるからこそ神秘的と言われる所以ですが、
反面、それが苦痛になる恐れも考慮するべきです。双方のバランスが難しいですね。

良い手品

2014年夏、とあるセルフワーキングマジックを友人に披露しました。とても感心され、翌年の同じ時期にリクエストをされました。

「これ、いいよな」

友人は何度もつぶやきました。

アウトオブジスワールドのような一致現象のパケット版で、特に自分にとって深い思い入れがあるわけでもなく、どうやら大変気に入っている様子でしたので、手放すつもりで友人に手順を教えました。
友人は完全な初心者。初めて手にするバイスクルトランプ。注意点を訊くために何度も何度も訪問され、その熱意に圧倒されました。
「きちっと演じられるようになるまでは人前で披露しない」というポリシーの持ち主で、何か気がつけばメモを取りながらパケットを手にしています。
「そんなに良い手品かな?」と不思議に感じました。4ヶ月後、友人はその奇術を『トランプ占い』として披露していました。

2019年夏、彼はその奇術を大切なレパートリーとして5年間、披露し続けたと聞きます。
彼が喫茶店などで披露しようものなら、近くの席で座って見ていた他人が「私も見てくれませんか」と今見たばかりの『トランプ占い』に必ず寄ってきます。
「相性、運勢を見てくれませんか」です。その様子を見て、また人が集まります。これはすごいことです。

人を呼ぶ奇術

そのさまを見て「私はこんなに人を呼ぶ奇術を持っているかな?」「私はこんなにひとつの奇術を宝物のように扱っているかな?」と自分を顧みました。「エラそうに、『この手品は卒業』だとか『飽きたから別の原理を学びたい』とか、自分は何を演っていたんだ」と恥ずかしくなりました。

それからというもの、昔覚えて現在は演じていない奇術を掘り返し、その中でもシンプルでわかりやすい現象を見直すようにしています。
『長くて難解な台詞』を、とにかくサラッとさり気ないものに変えました。
自分のメンタルマジックは見違えるように洗練されたと思います。

(例:「今、心に思ったカードを脳内のスクリーンに焼き付けて・・・」← 観客が「え?なになに?」という顔をしたら「トランプを思うだけ。」と言い換えます。)

アマチュアにとって良いマジックとは、親しみやすく自然に和ができるようなものです。場が和むような。

「タネを見破ってやろう」とか『演者対観客の対決』にもなりません。人は十人十色で千差万別と言えども、多かれ少なかれ『長くて難解な話』を嫌がり、かつ、自慢話を煙たがる生き物です。
複雑で長くてわかりにくい現象のマジックを見せて、得意満面に「これ、わかりますか?」と演じる奇術は嫌がられる。
ここから遠い奇術ほど好まれます。好まれる奇術を見つけたら徹底的に1本に絞って磨きます。
ブックテストひとつしか出来なくても磨けば大変な財産。これが私の答えです。

Follow me!

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です